就労継続支援A型の平成30年度対策

障がい福祉サービス

前回は就労系のサービス全般について書きました。
今回からは就労継続支援A型、B型、就労移行支援という順番で、具体的にご説明をしたいと思います。

A型、B型とも共通している部分も多いのですが、やはり同じには論じられないため、説明の重複をおそれずにいきたいと思います。

今回は、就労継続支援A型を取り上げます。

平均労働時間による報酬区分

就労継続支援A型は、「前年度の平均労働時間」によって、報酬が区分されることとなりました。
(利用開始(雇用後)のやむを得ない事情で短時間勤務になった場合以外は例外措置あり)


平均労働時間が7時間以上で615単位2時間未満で322単位となっています。

残業は数えないので、平均7時間以上ってなかなか達成は難しい数字ですね。

以下に、報酬区分と平成29年度と比較した場合の増減率の表を貼り付けますので、ご覧ください。

一見して、平均労働時間が4時間未満の事業所には、非常に厳しい評価が下されていることがわかります。

先日も書きましたが、まずは短時間の利用からというニーズは多いにも関わらず、これだけ厳しいことに改めて驚きます。

確かに実績をあげることのできない(あげる気のない)事業所や、突然の閉鎖でニュースになるような事業所が淘汰されることにも意義はあります。

とはいえ、そのような事業所でも月々の賃金を楽しみして働いている方がいるのですから、性急なブレーキはあまりよいこととは思えません。

改定の狙いは一般就労へのインセンティブ

さて、同じくこの4月から、障害者雇用義務の対象に精神障害者が加わりました。法定雇用率もアップしています。

就労系のサービスに対する報酬改定は、障害者雇用の制度変更とも大きく関係しています。

A型の利用者は、その4割以上を精神障害者が占めています(平成28年調べ)。

精神障害者が障害者雇用義務の対象になるにあたって、短時間労働者(週20~30時間)を、雇用率算定にあたっては0.5人ではなく1.0人として扱うことになっています。
(雇入れから3年以内の方 又は精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の方、かつ平成35年3月31日までに、雇い入れられ、精神障害者保健福祉手帳を取得した方)

一見すると、今回の改定ではA型事業所でなかなか長時間働けない人を締め出してしまうように見えます。
だからこそでしょう、今回の報酬改定では一般就労へ繋ぐことへのインセンティブを設けています。

一般就労に結びつけることで来年度の大幅加算増を狙う

A型、B型ともに、就労移行支援体制加算が昨年度とは比較にならないほど、高く評価されています。

定員規模20人以下の場合で、前年度に一般就労ののち6ヶ月定着した利用者がいる場合、定着者1人につき42単位が加算されます。

仮に平成30年度の10月1日までに、2人を一般就労させて、6ヶ月定着させた場合、
42単位×2人=84単位(!)
が加算されることになります。
(なお、10月2日以降に就労だと6ヶ月定着の成立が翌年4月1日以降になってしまいます。ご注意ください。)

もし、その事業所が報酬区分4(平均労働時間4時間以上5時間未満)だった場合、
586単位(基本報酬)+84単位(加算)=670単位
が平成31年度に算定されることになります。

つまり、闇雲に労働時間の長時間を目指すより一般就労に向けた支援(本来、就労継続支援に求められていることです)を行った方が、次年度でより高く評価されるということです。
これは、平均労働時間による区分分けによって、必然的に起こるであろう「長時間働ける利用者の囲い込み」を防ぐ効果を持っています。

就労支援については、経験や知識の少ない事業所も多いと思います。
これについては日を改めて書きますので、お待ちください。

新規希望者に対しては暫定支給期間中に綿密なアセスメントを

既存の事業所では、現在の利用者さんの平均労働時間向上を考える必要と、新しく利用したい人への対応が重要になってきます。

厚労省のパブリックコメント回答を見てみましょう。

A型事業の利用可否について

「就労継続支援A型の利用の可否は、暫定支給決定により、障害者本人の希望を尊重しつつ、より適切なサービスの利用を図る観点から、障害者本人の意向の確認とともに、就労継続支援A型の利用が適切かどうかの客観的な判断により決定されるものです。
また、就労継続支援A型は、サービス提供拒否の禁止が規定されているため、暫定支給決定を経て就労継続支援A型の利用が適当と判断された場合、障害者の体調が事業所の平均労働時間に影響し、基本報酬の算定に影響が出ることを懸念して採否を決めることは、サービス提供拒否となるため、指定基準上認められません。」

厚労省は、暫定支給期間中に、丁寧なアセスメントを行い利用が適切かどうかを見極めて客観的に判断してください、と言っています。

そして、事業所として利用を受け入れたのであれば、責任を持って就労できるように支援してくださいということです。
そのためには、自分たちの事業所で行っている「仕事」について、客観的な指標に基いた判断基準を定めることと、連携している相談支援機関と情報を共有していくことが大切です。

このあたりで丁寧な対応が取れていないと、どうしても周囲の評価(地域の福祉関係やSNS)が厳しくなってきます。
客観的であること、必要な関係機関に情報をきちんと共有しましょう。
自分たちの事業所でもろもろ抱え込むのが最も悪手です。

利用者が16人いれば賃金向上達成指導員配置も

また、加算関係では賃金向上達成指導員配置加算が新しく制定されました。

これは、賃金向上のための販路拡大や商品開発を行う職員を常勤換算1.0以上配置することで得られる加算です。

就労継続支援B型にあった目標工賃達成指導員加算とほぼ同じ内容ですね。

定員20人以下の場合だと1日につき70単位ありますので、利用者16人×20日開所で224,000円程度の加算が見込まれます。少ないですが1名分の人件費を充当することはできそうな数字です。

施設外就労の要件も緩和

施設外就労も要件が緩和されました。

これまで施設外就労へ出せる人数は、定員の7割までとされていましたが、その要件が外されましたので、施設外就労を強化するのも良いでしょう。

月2回のアセスメントも、事業所でなく施設外就労先で行ってよいことになっています。

自分たちの事業なりの目標を決めて来年度への準備を

報酬改定が出たのが、2月5日で、パブリックコメントの回答が3月22日。
この2ヶ月程度の間に平均労働時間を1時間増やすなんて、無理な話です。

福祉工場としての長い歴史がある事業所以外では、前年並みか報酬減が多いかと思います。

まずは自分たちの事業所の現状を把握して、今年度何ができるかを検討です。

  • 平均労働時間の向上が無理なく望めるのか?
  • 9月末までに2~3人を一般就労につなぐことはできないのか?
  • 新規利用者受け入れにあたり暫定支給期間中に客観的な指標を提示できるか?
  • 施設外就労の拡充ができないのか?

全てを行う必要はありません。

しかし、どれかひとつ、またはふたつを実行することで、来年度以降の事業所のあり方が変わってきます

就労継続支援A型は、ニュースにもなり厳しい状況が続いていますが、障害者さんの声で「A型事業所で働くのが夢」という方もたくさんいます。
その夢を叶える現場として、よりよい事業所像を目指してください。

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