就労移行支援の平成30年度対策

障がい福祉サービス

就労継続支援A型、B型ときて、最後に就労移行支援の平成30年(とその先)について考えてみましょう。

就労移行支援は、今回の改定でとりわけ大きな影響を受けています。
事業者の理解だけでなく、利用者、ご家族にも十分な説明とご理解が求められてきます。

平成29年度の報酬体系との違いと新体系の意味

これまでと同様に比較表を見てみましょう。

就労移行支援の報酬比較表

 

パッと見て、マイナス方向に大きく振れていることがわかります。

改定以前の就労定着実績による報酬区分

これまでの就労移行支援は原則「過去2年間のうちに就労実績がないと減算」という形でした。
以下のような体系(平成29年度版)です。

  • 過去2年間の一般就労移行実績が0:基本単位数の85%を算定
  • 過去3年間の就労定着者数が0:基本単位数の70%を算定
  • 過去4年間の就労定着者数が0:基本単位数の50%を算定

前年度の6ヶ月定着実績で単価が変わる

これが平成30年度からの報酬体系では、前年度に就労して6ヶ月定着した人数の割合でのみ判断されます。
これまで就労定着に関する支援について、「任意」で加算が取れるとしていたものが新サービスである就労定着支援が就労後の支援を受け持つことになったために、6ヶ月定着率への評価が高まったことによります。

就労後6ヶ月定着ということは、今年の10月1日までに就職→平成31年3月31日までに6ヶ月成立をしないと、その実績は翌年度ではなく翌々年度になります。
このあたりも十分注意が必要です。

ポイントは分母が定員であること

今回の改定で最も厳しいと思った点が、就労定着支援の実績の割合を算出する分母が事業所の定員であるということです。

たとえば、以下のケースを考えてみましょう。

  • 定員20人の就労移行支援事業所
  • 前年度平均利用者数12.0人
  • 前年度の就職者6人、うち5人が6ヶ月定着

5(6ヶ月定着者数)÷20(定員)=0.25 定着率2割5分
この場合の基礎報酬単位数:(四)686単位

定員が分母というのは、就職したら退所=利用者でなくなる就労移行支援にとっては、厳しい基準になりました。

パブリックコメントで厚労省はどう答えているか?

Q:就労移行支援の定着率の定義について、就労を継続している期間が6月に達した者の数を利用定員で除すとしているが、これでは、定員より少ない実利用者数で丁寧に就労移行支援を行う事業所が不利になるため見直してほしい。

A:就労定着者の割合は、前年度において、当該就労移行支援事業所で支援を受けた後就労して、就労を継続している期間が6月に達した者の数を、当該前年度の利用定員で除して得た割合となります。利用定員は利用実績を勘案して設定することが望ましく、利用実績数が利用定員より低い場合には、実績に即した利用定員を変更することも検討していただくことになります。

パブリックコメント結果:http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000171863

 

えーっとですね……。これを見てください。

就労移行支援事業所の定員分布出典:「就労移行支援に係る報酬・基準について」
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000182983.pdf

就労移行支援事業所の半分がミニマム定員の20人(または多機能型よる20人未満)で運営しているわけで、「実績に即した利用定員を変更することも検討していただくことになります」というのは就労移行支援事業所の約半分には全く意味をなさない回答なのです。

事業所の二極化が進んでいく

新しい報酬体系の下では、これまでもあった事業所の二極化が大きく進んでいくと考えられます。

つまり、

  • 就職準備支援型
  • じっくり就労支援型

の二極化です。

どちらが良い悪いではありません。
どちらにもニーズと必然性があるからです。

就職準備支援型の就労移行支援

  • 社会的スキルの習得やビジネスマナー、PC訓練などがアピール要素となります。就労支援は一般的な職業能力向上を目指します。
  • ハローワークとの連携が強い傾向。
  • ウェブサイトは、オフィス感のあるもので就労実績を強くアピールします。

じっくり支援型の就労移行支援

  • その人の特性に合わせた支援がアピール要素になります。オーダーメイド型の支援といった表現をすることが多くなります。
  • 就労支援にあたっては特例子会社や、特定の企業を目標として”現場で実際に行われる作業”、”実際の職場環境”に特化した支援を行います。したがって、連携できる就労先企業との関係が重要です。
  • ウェブサイトは、オフィス感よりも安心感をアピールすることになります。

定着実績×定員充足率が二極化を加速させる

前述したとおり、この2タイプは就労移行支援サービスが始まってから、ずっと存在していました。
もちろん、両者の要素を併せ持った事業所も数多くあります。

ただ、これまでは実績によるインセンティブが効かなかったため、どの事業所もまずは集客を増やすことを優先課題にするしかありませんでした。

新体系のもとでは、就労6ヶ月定着率が定員充足率(定員が実績評価の分母となるため)に左右されます。
そこで各事業所は「自分たちの強み」をアピールして、「自分たちの強み」を活かした就労支援をすることで、就労定着率と定員充足率の2つのミッションをクリアしていく必要が出てくるのです。

疑問:それって行政書士が口出しすること?

ここまで書いて、見出しのような言葉が頭をよぎりました。

はい。
確かに行政書士としては、ここまで書く必要はありません。
しかし、事業所の現場で働いていたり、日々の運営で忙殺されている事業者の方へ、「自分たちの強み」について考えるきっかけになればと思って書いています。

それは、どうしてでしょうか?

利用希望者を門前払いすることがないよう事業所とのマッチングを

上の見出しにつきるのですが、定着実績をむやみに上げようとして就労の見込みが低い(と事業所に評価された)利用希望者が門前払いされることが少しでも減るようにと思って書いています。

単に「門前払いするな」だけではダメですよね。

厚労省は門前払いをしてはいけないと何度も何度も強調しています。
就労移行に限らず、今回の就労系サービスに関する報酬改定を見ると、門前払いするなって言う方が大変なくらいです。

それなら、門前払いをしなくて済む(または最小限で済む)方向性を考えなくては、利用者(利用希望者)と事業者がどっちも苦しむことになると、私は考えます。

そして、門前払いをできるだけ少なくして、定着実績と定員充足率を同時に上げていくために必要なのは、利用希望者と事業所のマッチング、そしてその精度を高めるしかありません。

マッチングの精度を高めるためには、「自分たちの事業所の強み」への意識を高めて、自分たちの地域で、インターネットで、様々な場所でアピールしていく必要があります。

つまり、二極化が進むのは、報酬体系による受け身の影響だけではなく、事業所ごとのアピールの精度が上がる結果なのだと言えます。
このあたりについては、回を改めてお話しします。

就労系サービスまとめ

3月22日に出た報酬改定に関するパブリックコメントの回答から、考察を始めて、年度またぎの混乱を終えて、就労系サービスの報酬改定とそれに対する各事業所様の今後の姿勢ついて、ようやく骨組みとなるものが見えてきた感じです。

本来は就労移行支援から書き始めるつもりでしたが、就労移行支援が一番むずかしいと感じたので、最後に書くしかありませんでした。

もちろん、サービスごと・事業所ごとに方針も運営理念も異なりますので、ここで書いたことが全て正しいであるとか、ただ一つの正解であると言う気は全くありません。

ただ、就労系サービスの全体を通して一般就労とその定着実績という視点が大きく導入されたことで、全ての就労系サービス(就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労定着支援)と、その他日中系サービスが、今まで以上に相互の連携が必要になってくるのは間違いありません。

 

お読みいただきありがとうございます。

コメント