【厚労省にも聞いてみました】障害福祉サービスを運営する法人同士の合併

障がい児通所支援

まだまだ多くないですが、増えてきているなというジャンルの問い合わせです。

障害福祉サービスを運営している法人同士が吸収合併

この件については、各都道府県の出している集団指導資料やQ&Aなどの資料を読むと、「うん、それは読み間違える人も出ますよ!」という気がします。

でも、これを読み間違えてしまうと、合併がスムーズにいかないだけでなく、事業所の利用者さんがしばらく利用できなくなるなど、不利益が発生してしまいます。それはちょっと放っておけないので、今回の記事にしました。(会社法上における法人の吸収合併については、詳しく触れませんのでご了承ください)

さて、某県のQ&Aより引用すると、

Q: 合併や事業譲渡により申請法人が変更になった場合の手続き方法を教え て下さい。

A: 法人格としての継続性が認められない限り、既存の事業所を廃止すると同時に、変更後の法人による新規の指定申請が必要となります。(例えば株式会社が運営する事業所をNPO法人に引き継ぐ場合等)

  • 事業譲渡の場合は、譲渡する法人からの廃止届と、譲渡を受ける法人による新規指定の申請が必要です。
  • 合併については、吸収合併の場合において存続する会社が運営している事業所に関しては、引き続き運営することができます(法人の名称、所在地、代表者等の変更を伴う場合はその旨の変更届は必要)が、合併により消滅する会社が運営している事業所、あるいは、新設合併(既存の会社をすべて解散し、新たな会社を設立してそこへ事業譲渡する)の場合は、上記と同様に廃止と再度の指定申請が必要となります。
  • 有限会社から株式会社への変更は、法的には「商号変更」として扱われることから、手続きは「廃止・新規指定」ではなく、法人の名称変更による変更届で可能です。
  • 合同会社(合名会社・合資会社)から株式会社への変更(その逆も可)は、会社法において規定されている「組織変更」にあたり、法人格の継続性が認められる変更であることから、法人の名称変更による変更届で可能です。(ちなみに、合同会社、合名会社、合資会社の相互間の変更は「組織変更」に当たらず、定款の変更のみで可能です。)

ここでポイントとなるのは、本来冒頭の太字「法人格の継続性」だけです。継続性がなければ再申請というだけの話なのです。

でも、お問い合わせで多いのは、黄色マーカーの部分だけを読んでしまい、「が、」以降の青色マーカーの部分の認識があいまいなまま進んでしまっているケースです。

このQ&Aでは、短い文章中で丁寧に説明しようとした結果、余計混乱する内容になってしまっています。

吸収合併前に「存続する会社」が運営していた事業所について

再度上記から引用します。

合併については、吸収合併の場合において存続する会社が運営している事業所に関しては、引き続き運営することができます

2つの会社が吸収合併をすると、「存続会社」と「消滅会社」となります。上記は存続会社(吸収する方)について書いているのですが、この事業所って何のことを指しているか、パッと見ておわかりでしょうか?

「運営している」という現在系の書き方が混乱の原因かなと思うのですが、正解は、

存続会社が”合併前から存続会社の名義で運営していた”事業所

のことを指しています。この事業所を仮に事業所Aとしましょう。事業所Aは、合併前から存続会社が運営している事業所で、合併後も存続会社が運営するので当然「引き続き運営することができます」ということになります。これって、ほぼ何も言っていないのに等しいです。

でも、存続会社は、合併前に消滅会社が運営していた事業所を、当然に「引き続き運営すること」はできません。これは法人格の継続性がないため、再度の指定申請が必要なのです。

吸収合併前に「合併によって消滅する会社」が運営していた事業所について

こちらも再度引用します。

合併により消滅する会社が運営している事業所(中略)の場合は、(中略)廃止と再度の指定申請が必要となります。

さっきと同じように、どの事業所のことなのかを補足すると、

消滅会社が”合併前に消滅会社の名義で運営していた”事業所

になります。存続会社のときと、少し書き方が違います。消滅会社の場合は、「合併前から」ではなく「合併前に」となっています。そして、この事業所を仮に事業所Bとします。

それはどの時点で、どの法人が行うべき手続きかをまとめます

一番問題になるのは、「消滅会社が”合併前に消滅会社の名義で運営していた”事業所」、事業所Bです。

廃止と再度の指定申請

  1. 既存の事業所を廃止=消滅法人が消滅前に合併と同時に事業所Bが廃止されるよう、廃止届を出します。
  2. 新規の指定申請=存続会社が合併前に合併と同時に事業所Bの運営が始められるよう、新規指定申請を行います。

それぞれ届出と申請を行うべき法人が違うのです。
合併前はそれぞれ別の法人で、合併後は存続会社しか残っていないことをイメージすると、理解しやすいのではないかと思います。

この件では、消滅会社様からご相談をいただくことが多いのですが、

  • 廃止届出書類の作成とそれに関連する業務=消滅会社様から受任可能
  • 新規指定申請書類の作成とそれに関連する業務=存続会社様から受任可能

ということになります。

厚生労働省にも聞いてみました

障害福祉サービスを運営している法人同士の合併については、障害者総合支援法にも細かく定められているわけではないので、厚生労働省にも電話で聞いてみました。

  • 消滅会社と存続会社がそれぞれの責任で、廃止届と新規指定申請を行うこと=そのとおり
  • 事業所の賃貸借契約や、従業員の雇用契約など合併によって引き継がれる権利義務の扱い=管轄の都道府県や政令市、中核市の障害福祉課と協議して進めること
    (一般論では合併によって権利義務は消滅会社から存続会社へ引き継がれますが、ここは許認可に関係しているので個別に確認をする必要があります)
  • 事業所の実績(平均利用者数や就労実績数など)=新規事業所扱いのため引き継げない
  • 利用者様と事業所のサービス利用契約=引き継げないので、存続法人の名義で再契約
  • 利用者への説明=運営主体の変更は重要事項にあたるので、事前に説明が必要(仮に事業所の場所や職員が変わらないとしても、運営主体が変わることは説明する)

合併契約書を締結する前に管轄の障害福祉課へ相談

一番重要なのは、サービスの提供が途切れないようにすることです。

消滅会社が運営していた事業所を、存続会社が引き継ぐために指定申請を改めて行う場合、どの時点で申請が受理されるかを見極めないと、1~2ヶ月空白期間が空いてしまう可能性があります。それは避けなくはいけないことです。

したがって、いつの時点で合併するのか、効力発生はいつかなど、事業所を指定している管轄の自治体を事前に相談したうえで、合併の取り決めを行い、そのうえで合併契約書を作成するようにしてください。

自治体担当者さんには、「サービス提供が途切れないことが最優先」と伝えて欲しいです。
とはいえ、窓口の職員さんはもちろん法人合併の詳細には踏み込みません。
気軽に「でしたら、もう1ヶ月合併を遅らせてください」と指示することだって大いにありえます。

このあたりは、各自治体の窓口の「温度」に大きく左右されてしまいます。左右されないためには、とにかく事前に、合併の交渉が始まる段階から、行政への相談も始める気持ちで進めてください。

相談へ行く際も、存続会社・消滅会社両者の担当者2名で窓口へ行くことをお勧めします。

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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